[本田]: 実力のある応募者であれば、このビジョンルームの内装やプロジェクター設備などを見て、「こういう部屋があると、いろいろ利用できますね〜」といった反応を見せます。そうした反応は、入社後に「誰を呼んでどんな打ち合わせをするのか」が、具体的にイメージできていることの表れと判断できます。
一方、あまり仕事意識の高くない応募者の場合、「へえ〜、きれいなオフィスですね〜」という物見遊山の反応になります。どちらが即戦力の人材であるかは明らかでしょう。つまり、このビジョンルームが、応募者に対する、「一種のリトマス試験紙」の役目を果たしているといえます。
-- ここから先は、ビジョンオフィスに入るまでの過去の話と、これからの未来の話を聞きたいと思います。まず過去の話からお聞きします。ビジョンオフィスに入居する前は、どういうオフィスにいたのでしょうか。
[本田]: 神田の古い雑居ビルの8坪ぐらいの部屋にいました。そこを選んだ理由は、家賃が安かったからです。
-- なぜ引っ越そうと思ったのですか。
[本田]: 単純に、人が増えて狭くなってきたからという理由が一つ。もう一つは、当時何となく感じていた閉塞感を打破したかったという目的もありました。
-- どういう閉塞感を感じていたのでしょうか。
[本田]: 6年間、勤めた出版社をやめてTOEを設立。まず本を一冊出版。二冊目は英語で出してみました。しかし出版だけではやがてやせ細るのは明白。このままでは、当初の目標である映画制作やコンテンツ・プロデュースにたどり着くのもいつのことやらという状態でした。「これじゃイカン、急成長するぞ。よし、上場して資金を調達して夢をかなえる。これからは上場目的会社として活動するぞ」と神田の雑居ビルの中で決意しました。
-- 決意して、それからどうしたのですか。
[本田]: 上場するにはどうすればいいのか、見当もつかなかったので、経産省の主催イベントに出展した時に、「上場したいんですけど、どうすればいいんですか」と経産省の方に質問しました。するとトーマツのベンチャー育成部を紹介されたので、そこから話を聞いて、いろいろ勉強しました。
そのうちに小泉首相が「コンテンツ元年」などと言い出すようになり、どうも時代の風向きが良くなってきた。いろいろ人脈も広がり、「実のある打ち合わせ」もできるようになってきました。
しかし雑居ビルではいかんせん人を呼びづらい。呼んでも狭くて打ち合わせができない。もはや引っ越すしかないと考えました。
-- その時の引っ越し先選びの基準は何だったのでしょうか。
[本田]: 現状より少し高いくらいの家賃で、現状より広く、それなりに人が呼べそうなオフィスを探していました。
-- ビジョンオフィスのことはどこで知ったのでしょうか。
神田を歩いているときに、ポスターが貼ってあったのを見て知りました。おお、なんかオシャレなオフィスだなと思い、さっそく物件を見学。家賃は、予定していたよりはるかに高いけれど、ここは何か良さそうだと思いました。
-- どのあたりが良かったのでしょうか。
[本田]: 見た目がオシャレということが一つ。もう一つは、家具もITも電話も全部揃っていて、着のみ着のままで引っ越してきても、その日からすぐに業務ができるとのことでした。引っ越しのような業務と直接関係ないところで、手間や時間、お金がかかるのは避けたかったので、これは有り難い話でした。
実際の引っ越しも、お金と時間を節約するために、業者に頼まず自分たちでやりました。パソコンや書類などの道具を、自分たちで運びました。
-- そうして業務を中断することなく新しいオフィスに入れたと。
[本田]: 体とパソコンさえオフィスに運びこんでしまえば、電話もネットワークも机も椅子も全部揃っている状態だったので、助かりました。自衛隊の入隊などで「パンツ一枚でやってきてOK。着替えも何もかも全部揃っているから」という勧誘文句がありますが、ビジョンオフィスもそれに近いものがあると思います。
-- ここで上原社長にお伺いしたいと思います。ビジョンオフィスの場合、通常のオフィスビルとは違った意味で、入居審査が厳しいとのことですが、どのように厳しいのですか。
[上原]: 単純に言うと、ビジョンオフィスは、私が気に入った人、信頼できる人にしか貸したくありません。
-- 思い切ったことを言いますね。
[上原]: 別に高飛車に構えたいわけではありませんが、何といってもビジョンオフィスは、ものづくりの気持ちで、丹精こめて作った作品ですから、使いこなしてくれそうな会社にだけ貸したいのです。
-- どうういう会社だと使いこなせるのですか。
[上原]: 「成長中の会社」、「成長を志向している会社」なら使いこなせます。ビジネスモデルが良い会社と言い換えてもかまいません。ビジネスモデルさえ良ければ、非常に高い確率で成長できますから。
-- TOEの第一印象はいかがでしたか。
[上原]: 社長の本田さんが若いなと思いました。若いのはいいことです。また日本のクリエイターのエージェント業務をやるということで、そういうモデルはこれからいいんじゃないか、成長するんじゃないかと直感しました。本田さんも信頼できそうだし、この会社なら、ビジョンオフィスを活用して成長してくれるだろうと確信できました。
| ■ パターンメイド・オフィス、セミ・オーダーメイド・オフィスとは? |
-- 再び、本田さんにお伺いします。ビジョンオフィスに入居するにあたり、不安はありませんでしたか。
[本田]: ビジョンオフィスに入った時は社員5人で、12坪の部屋を借りました。しかしその時の経営計画では、半年後には社員が10人になっているはずで、そうなると入って半年でまた引っ越さなければなりません。どうしたものかと考えあぐねました。
-- その問題には、どう対処したのでしょうか。
[本田]: まずは上原さんに相談しました。すると、「じゃあ、引っ越しが発生する半年後に合わせて20坪くらいの部屋を作ろう。その時はTOEさんの意向も反映させるから、どんどん意見を言ってね」との返答でした。そりゃありがたいということで快諾しました。
[上原]: 少々、補足しますと、TOEさんが最初に入っていた12坪の部屋は、パターンメイド・オフィス。次に引っ越してもらったのはセミ・オーダーメイドのオフィスです。
-- パターンメイドとセミ・オーダーメイドではどう違うのですか?
[上原]: パターンメイドは、ビジョンオフィスが設計した「作りつけ」のオフィスで、広さは原則10坪程度と小さめのオフィスです。一方セミ・オーダーメイドは、入居者の意向をある程度、反映した作りになっており、広さも20坪程度と広めになっています。
-- パターンメイドなら10坪程度。セミオーダーなら20坪程度。この広さの違いには何か理由はあるのでしょうか。
[上原]: 10坪ぐらいの狭いオフィスの場合、レイアウトのバリエーションにも限界がありますが、20坪ぐらいの広さになると、相応の変化がつけられます。TOEさんは、入居当時は5人ぐらいの規模だったので、最初はパターンメイドのオフィスに入ってもらいましたが、それではやがて手狭になることは明らかだったので、やがてはセミ・オーダーメイドの方に移ってもらおうと当初から考えていました。社員10人ぐらいになると、セミオーダーメイドの方が仕事がしやすいはずですから。
[本田]:仕事のしやすさは、実感しています。10坪から20坪と二倍の広さになると、感覚的には三倍広くなったように感じます。不思議ですね。
-- なぜ、そのように感じるのでしょうか。
[上原]: 20坪になった段階で「レイアウト」の概念が持ち込めるからではないかと予想しています。社員4〜5人の段階では、みんなで机を並べて働くのが基本スタイルであり、「レイアウト」はそれほど必要でもありません。
しかし社員数が10人に近づくと、そろそろ役割分担や部署の概念が発生します。役割分担は会社ごとに多彩なので、やはり入居者の意向をある程度、取り入れた方がよく、カスタマイズの重要性が増します。つまりセミ・オーダーメイドです。
ビジョンオフィスが提供したいのは、単なるハコとしてのオフィスではなく、ビジネスを加速させるための「コクピット」です。コクピットである以上、操縦者が使いやすいレイアウトにしたいと考えるのは当然です。
-- その理想は大変すばらしいと思うのですが、しかし、そのようにTOEの意向を取り入れたオフィスを作ってしまうと、TOEが出ていった後が困るのではないでしょうか。中古車販売においても、改造車というのは販売しにくい。それと同じように、セミ・オーダーメイドのオフィスも借り手がつかなくなる恐れがあると危惧されるのですが。
[上原]: TOEが実際に入っているオフィスを見れば分かりますが、決して、奇妙きてれつな「改造オフィス」にはなっていません。オフィス設計においては変えて良い部分と、変えてはならない部分があり、入居企業の意見を取り入れるのは、「変えて良い部分」だけです。また「変えて良い部分」については、実際に入居する企業の意見を聞くのは、どんな入居者にとっても働きやすいオフィスをつくる上で、有用だと思います。
なお、TOEの成長速度からすれば現在のオフィスもすぐに手狭になると予測されます。次の引っ越しの時には、一緒に話し合って「フル・オーダーメイド・オフィス」を作りたいと考えています。
-- フル・オーダーメイドとなると、よりいっそう「改造度」が増し、ますます入居企業を選ぶことになりますね。
[上原]: 確かに弊社にとっての表面的な空室リスクは増します。しかし、それでもなお挑戦したいですね。ビジョンオフィスは、例えばフェラーリのような、「客を選ぶ」オフィスになりたいと考えています。フェラーリは、それを買う人、乗る人に、「フェラーリにふさわしい乗り手」たるよう、ごく自然に強制します。それと同じようにビジョンオフィスに入居する企業には「成長すること」をごく自然に強制したいと思います。
-- ビジネスコクピットという概念、フェラーリとの比較…何だかメカっぽい話が続きます。
[上原]: 私の最初の社会人キャリアは、ホンダのテストドライバーでした。その後、不動産鑑定士の資格をとって、この業界に転身したのです。そうしたキャリアパスが考え方に影響を及ぼしているのかもしれません。
-- 最後に本田社長に今後の抱負をお聞きしたく思います。
[本田]: ビジョンオフィスは、「入居したからには成長しなければならないオフィス」、つまり虎の穴であるわけで、ご期待に添えるよう、早く成長して、早くフルオーダーメイド・オフィスに越せるようにがんばりたいと思います。
-- 今日は貴重なお話を有り難うございました。
■企業情報
株式会社ティー・オーエンタテインメント 設立2003年4月
-事業内容-
作家、アーティスト、映像作家等、多数の人気クリエーターのエージェント業務、
各種コンテンツ開発など